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教区改編にて見えてきた課題について

教区教化副本部長 藤森 勝彦
 

 東北地方の課題を考えると様々なことが思い浮かぶ。人口減少や過疎・高齢化。生活基盤となる第一次産業の衰退。そして、東日本大震災や原発事故による被災からの復興、など。こうした状況が寺院運営や教化活動に様々な形で影響を与えている現実がある。ただ、これらの問題は、必ずしも改編の動きと連動してはおらず、以前から抱えてきた課題でもある。
 それに対し、「教区改編に伴って見えてきた課題」を考えると、改編に伴うものかどうかの線引きが難しいが、二つの問題が見えてくる。①広範囲となった教区に対応できる教化体制の構築。②改編に伴う予算の変化への対応、である。

 ①については、宗門が掲げる「組を基軸とする教化事業の展開」との教化目標を念頭に組教化部門を作り、この課題に対応しようとしている。ただ、現状では、組教化部門で議論している「組間共同事業」や「他の委員会各部門と連携する様々なサポート」などは、情報収集・課題整理と検討の段階にあり、本格的な取り組みは次年度からとなるであろう。さらに、教化事業全体ですすむオンラインの活用も、試行錯誤しながら充実を計らざるを得ない状況にある。
 
 ②については、教区事務通信冒頭の「東北教区の財務について」の項目で示されていた通りである。即ち(ⅰ)改編後、四年目からの教化助成の減額。(ⅱ)従来の教区費の割当方法が宗務改革次第で見直されること。(ⅲ)旧教区で拠出した繰越金の同額の確保の困難さ、である。
 このような流動的な状況の中で、改編で見えてきた課題を論ずることに意味があるかはわからない。ただ、私たちは今、宗祖親鸞聖人御誕生八五〇年の慶讃法要の節目に当たり、未来の宗門の形が方向づけられていく大きな分岐点に立っているのだから、黙って手をこまねいているわけにはいかないだろう。むしろ、限りある時間をいかに活用し、実を挙げるための教化体制をきちんと構築できるか。教区のみならず宗門のあり方を開くための重要な時間と考える。
 
 まずは初年度に計画実施された事業を、先の① ②の課題に照らして点検しつつ、課題を共有し、議論を深め、創意工夫を重ねることが必要であろう。そのために、一人一人が人任せにせず発言し、発信し、行動することが願われる。見通しが不透明な状況だからこそ、原点に返り「寄合談合」を大切にし、「ものを言う」ことが尊重される場を開く。課題は結局私達の姿勢に帰ってくるのかもしれない。